僕が正藍染をする理由

前回の続き

松崎、本物を知り本物を見なさい
歴史に答えがある
歴史を知る事が1番の近道や

本物を知るにはそれしかないと思い
先生(吉岡幸雄)にも頼み
古い文献を借り就業時間外に読みまくった

古字過ぎて
意味がわからないのも多々あった。笑

そこであることに気付いた
どの文献を読んでも 本藍染や
天然灰汁発酵建て という言葉は出てこない
あれほど、徳島の天然灰汁発酵建ては
江戸時代から続く本物だ と
教えられてきたのに
そんな言葉はぼくが調べた中で
ひとつも出て来なかった

薬品建てや割り建てと区別するため
正藍染や正藍建、本建という呼び名は
昭和初期頃から残っていた

今の時代SNSがかなり進歩して
調べたらなんでもわかる時代だけど
間違ってる事も多いし
ネットで調べた事が全て正しいと思わず
自分でしっかりと歴史から
紐解いていくのは大切な事だと思った

SNS上にありふれたブランディングは
洗脳に近いと感じた

本物の藍染=本藍ではない
という記事を以前書かせてもらったので
リンク貼っておきます

画像

自宅風呂での失敗を繰り返す藍と
歴史を掘り下げていく事を続けていくと

自分がその時代の人間ならどうしてたか

という事を考えるようになった

それと同時に

芸術家やアーティストは歳を重ねるごとに
尖ってた角が丸くなっていく事にも気付いた

例えば
絵描きの作品に年々無駄な線が減っていくように

自身が行なっている藍建てにも
無駄な事がたくさんあるんじゃないか

そう考えるようになった

そこで、目に付いたのは使用している材料

本当に昔の人達は、同じ材料を使っていたのか
天然灰汁発酵建てで使用した材料
ひとつひとつを紐解いていくことにした

1.すくも藍
これは確実に使っている。笑

蒅の質は農家に寄って違う
阿波藍の老舗農家さんが
作っている藍は全て使った

2.木灰汁
これも確実に使っている
木灰汁のおかげで
歴史に残る植物染は成り立っているし
木灰汁のおかげで今では当たり前に
使っている紙が誕生している
人類は灰汁と共に生きてきた

3.石灰
これは疑問に思った
ph調整の為に使うと教えられてきたが
そもそも昔の人達に
phという概念は絶対にない
phの歴史は化学染料が誕生した
約160年前ぐらいだろう

まずそもそも何の疑問も思わずに
使ってきた石灰の事を調べると
いろいろと怖い事も出てきた

石灰は水に溶けない
化学火傷を引き起こす
失明した例もある など

水に溶けないものを
なぜ藍の染液に入れるのか

化学火傷を引き起こす
危険なリスクがあるものを
本当に昔の職人達は使っていたのか

そもそも本当にph調整のみに
使われていたのであれば
木灰汁の質が高ければ必要ないのではないか

上記の疑問から石灰の使用を辞めてみた

4.麩(ふすま)
ふすまに対しても疑問に思っていた
本当にふすまがないと建たないのか
そもそも発酵するのはすくも藍であり
すくも藍自体が質が良く力強さがあれば
ふすまも必要ないのではないか
ふすまも辞めてみることにした

元々の最初の始まりは
きっと、すくも藍と木灰汁のみで
やり始めたはずやろという結論に行き着いた

この二つのみで建てたらどうなんだ?
すくも藍建て本来の根っこ部分
藍と木灰汁のみ

わくわくした

そして、試行錯誤を繰り返し
藍と灰汁のみで建てられるように
素材が最大限の力を
発揮できるようにサポートした

親が子に一人で生きる力をつけさせる
みたいに
藍単独で建つにはどうすればいいかを
考え、試し、失敗を繰り返し
ようやく、藍と灰汁のみで
建てる事に成功した
団地の風呂で。。笑

その藍で再度新しく
狐やの恭維の仕事着を染めて
恭維に着てもらった

しばらく使い続けてもらったが
前回と違って
色移りもしないし
色落ちも全然しない

これだ と思った
100%に少し近付いた感覚があった

先生はいつも現代の技術なら
昔より進歩してるから
簡単に染められるだろうと思うけど
歴史に残っている染織品には勝ててない
と言っていた

本当にその通りで
現代では、天然染色は
すぐ退色するといわれているけど
正倉院に残っている染織品は
1300年前の色が平然と残っている

明治以降化学染料で復元された部分は
色が飛んでいるのに対して
天然で染められている部分は
平然と変わらずに佇んでいる
昔の染色技術は恐ろしく高い

それ以降
時代が下がると共に
もっと商業的になってる

簡単に安価で大量に生産できるように

時代の移り変わりで
安価な化学染料が入ってきただけではない

天然と称して使っているものも
使い方によっては
同じぐらいの効果を得られる

目先の楽をとると目の前の壁を
先延ばしにするだけで
いずれまたその壁、障害にぶつかる

その事に気付けた事は本当に有り難い

手間や時間はかかるけど
このやり方が僕の経験上
現状一番色が強く
素材本来の力を活かしている
(それでもまだまだ洗練できる事はあると思っているしやりたいこと、試したいことがある)

初めから答えを聞いて始まったんじゃなく
時間はかかったし、失敗の方が断然多いけど

ただただ、色が一番強く綺麗な色を求めて
現代の当たり前とされている藍染から
歴史を徐々に遡っていき
今のやり方に行き着いた
室町時代にすくも技術が生まれたこの建て方
正藍建 本建 正藍染

今の時代SNSが発達して
誰でもすぐに
何でもできるような時代になり
プロとアマチュアの境目が曖昧になっている

SNS上だけで調べて
その内容をそのままコピペして
自分の言葉のように語って
商売をしている人達で溢れている

目先の金儲けの事しかとらわれず
歴史を調べもせず耳障りの良いところだけ
そのままマネして
歴史に敬意をもたない人が多い

だから、僕は自分の経験と
自分の持つ言葉で発言して
歴史に敬意を持ち正藍染をしている

これからも
先人に敬意を払いバチバチに染めていく

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