藍の品質を調べる方法

今回は藍(すくも)の品質を調べる方法を紹介します

化学染料が当たり前になった現代では
天然の藍の良し悪しを区別する人間もいなければ、判断できる人間もいない
科学が進歩した今なら定量分析などで判別できるかもしれないが個人レベルでは難しいしぼくがお客さんならわざわざそんな事をする気にも起こらない
そこで古来より藍の品質を調べる方法がある
歴史に残る肉眼鑑定法とでも言うべきか

それが、手板法 というやり方

ただ、昔のどの本も読んでも手板法の方法のみが書かれていて結果の良し悪しの判断基準がわからない
弟子見習いの時からなけなしの金でコツコツ集めた文献コレクション。。
その中に一冊だけ 判断基準となる内容を発見

手板法で無形文化財に指定された
徳島の佐藤平助さんのお話

まず少量の蒅(すくも)を掌にとってみる。
それにほんのわずかの水を加え、掌の上で小さなヘラを使いよく練る。
その作業の間に、感触、色、ねばりなど、さまざまな角度から染料としての適度を見ていく。

そして最後に、その蒅を手板紙と呼ばれる
加賀和紙にすりつけ、日射しにかざして、
藍の色を観察する。

良質の蒅は赤味をさしていて、手板紙にすりつけると、茶色にしかならない。
逆に質の落ちる蒅は青くなる。
不思議なことだが、赤味のある蒅ほど、鮮やかな藍色に染まり、青い蒅ほど藍が落ちやすいのだという。

文字で読むだけなら簡単に思えるかもしれないけどこれには経験と熟練、勘が必要でしょう
言うは易く行うは難し

ただ、敬意をしっかりと持ちながらも
自ら伝統伝統と言い敷居を高くするのは
ぼくは好きではないので、要するに
手の上ですくもを水で練る→和紙につける→日に当てる→茶色なら◎青色なら×
で、まずやってみる事が大切だと思います
個人的な見解ですが良質な藍なら手板法が多少下手でも青くは染まらないはずです
※ちなみに僕は徳島の蒅で何回かやってます

平助さんは、こう言われてます。↓
「苦労させた藍が蒅になると、その汁は赤黒い青味になるわの。ほんな蒅は糸を染めて、すぐに水で洗うても、落ちんがの、藍が。
ほんでも無理に温度を上げて、日数をけちった蒅は、紙につけると真っ青で美しいが、糸を染めると、水に落ちて染まらんわの」

「藍に問うんだの、水を食い切ったときに。そのとき、藍は答えてくれる。
水が多かった、少なかった、というように。

こちらが不機嫌じゃと、藍も不機嫌になるんじゃ。

平助さんの母が亡くなられた年

今年の蒅はいつもと違うが、どうかしたのか

渡辺庄吉さんという紺屋さんにいわれたそうです

平助さん↓
作る人の心が、そのまま藍に伝わるんだの。

その紺屋さんの話じゃが、藍瓶の中へすくもを入れるときに、無造作に放り込んだときと、大切に入れたときとでは、染め上がりが違うそうだわ」

とおっしゃられています
確かに僕も心当たりが幾つかあります
見習い駆け出し時期に藍を自宅でやり出して今よりも全然無知だった頃に、藍を仕込むのがめんどくさいと雑にそのまま甕にすくもを入れて仕込んだ事があります

季節も6〜7月頃で暖かく発酵もすぐに進むだろうと思っていました
しかし、全く発酵せず結局その藍は建ちませんでした

そのような失敗を何度も経験してるからこそ藍に対する敬意と向き合い方を学ぶ事が出来ましたが渡辺さんの言われてる事には納得させられました

食パンに良い言葉と悪い言葉を吐き続ける言霊実験と同じで触れるものにも現れるというのは感覚的というか実体験的に共感できる部分があります

SNSを見ていると
手板法を載せておられる
職人さんもおられますので
体験や講座をご検討されてる方は
参考にしてみると良いです

和紙につけたすくもが
茶色なら◎ 青色なら×です

手板法の
正式なやり方も載せておきます
興味がある方は参考にしてください↓

供試品四匁を左掌に盛り、最初篦で五〜六滴の水を混じ、先ず篦でよく煉り交ぜて水を一様になじませ、次に拇指で更に充分煉り、此間水分が足りないことを認めると適宜篦で水を加え、固い餅状を呈したとき、煉藍を水に浸し再び拇指で煉り、或は両掌の間で揉み、必要なときは浸水と煉揉とを繰りかえし、此間に肉滑りを味い、次に煉藍を球状に揉み、少しの水を掌中に入れ、球状の煉藍を数回掌上の水で摩すると濃厚な藍液が得られる、これを篦で能く摺り潰し、時時液汁を篦の先端に集め、急に篦を直立して液汁が篦に添って流れる速度を観察する。
然してこの操作は迅速に行うもので流下の為め液を失ってはならない。

煉藍を球状とし更に両掌の間で揉み、楕円形にして一端をやや細く剣先をつくり、篦上の藍汁を掌上に移し、これを剣先に塗布して加賀半紙上に押捺する。
この煉藍を椎茸といい、押捺した印画の周囲は篦先を使って液汁で輪郭を正す。
なお手に残った液汁は篦で汁板に着け斯くして手板紙の色の濃淡、手裡に感ずる括性及び弾性の多少、並に液汁の色沢の良否を鑑別して優劣をつける。

以上 藍の品質を調べる方法 でした
ありがとうございました

≪ BLOG一覧へ戻る

CONTACT

京藍染師 松﨑 陸へのコラボ商品のご依頼、その他のお問い合わせ等は、お電話、
またはお問い合わせフォームより承っております。お気軽にご連絡下さい。